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door-work
2000 WORKS


Wrapped by time #1103
materials : cast pulp
scale : 3200 mm x 7800 mm
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000

Wrapped by time workshop
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000
Wrapped by time workshop
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000
Wrapped by time workshop
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000
Wrapped by time workshop
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000
Wrapped by time detail
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000

Wrapped by time detail
Tatsuno Museum / Tatsuno / Nagano 2000
信濃毎日新聞記事 11/24 2000

刻(とき)をつつむ −むかしの町と今のわたし一

2000年10月26日

「刻をつつむ」の打ち合わせをおこなうため、朝6時30分に長野インタ叩から入り辰野へ向かう。高速で辰野に向かうのはこれが初めてではないのだが、朝もやの中、心地よい緊張感に包まれる。
9時辰野美術館にて赤羽さんに会う。まずはワークショップの対象となる歴史的な建物家探しに街に出かける。ついでに美術館のある荒神山のふもと、天竜川沿いにでんと構えるパルプ工場に出向き、今回のワークショップで使用するパルプを見せてもらう。 対象となるめぼしい建物は赤羽さんが事前に数件下調べをしてくれていたので、その物件を順に見て回る。遠くでは小野神社。近くでは見宗寺を下見する。小野宿の雰囲気にも惹かれ、小野神社本殿前の木の階段にも魅せられつつ、見宗寺の門構えを案内していただく。それぞれの建物がそれぞれの歴史を深く刻み込み、染み込ませており、言葉では言い表せない威圧感が見る者に迫ってくる。しかし、かねてより赤羽さんが推薦していたという見宗寺の山門は、小規模ながらとても魅力を感じ、場所を決定するのにさほど時間はかからなかった。次いで、素材となる出荷前のパルプを工場で分けてもらい、これをもとに長野で実験を行なうことにする。

2000年11月15日

再び辰野へ。対象となる見宗寺の石畳のサイズを測りに行く。パルプで型取りした雌型の展示を行なう時点で、全体を30センチほど床から持ち上げるアイデアを思いつき、実現すべく大工のK君を連れて計測。木の補助枠の材料を見積ってもらう。実は、先だって貰って来たパルプが実験の結果思ったようにならず苦慮する。数々の試行錯誤の結果、十分水を含ませたパルプを3校に剥ぎながら使用すればうまくいくことを発見、バックアップに寒冷紗と障子紙と障子のりで貼って使用することにする。

2000年11月19日

いよいよ本番。参加者に大まかな説明を行ない、さっそく作業に取りかかる。最初は石畳、その後、柱、梁、蟇股と進む予定であつたが、作業量が参加者を上回り、夕闇迫る中作業灯をお寺からお借りし、石畳の予定部分と柱の1本を取り終えるのがやっとだった。美術館のスタッブの方大変ご苦労様でした。
参加者には作業の合間、各自が山門の好みの一部をパルプで型取りをしてもらう。2日目のワークショップの際にそれをもとに鋳型を作り、思い思いの線を鋳型に彫り込んでもらい、ガスコンロで溶解した錫を流す予定。この作業を行なうことにより、参加者の意識が一層対象の山門に向けられ、個々の人間と、対象となった山門とのかかわりがより強調される。また、共同で作品制作を行なう事で同時体験を経験し、小規模ながらも歴史を共有してゆく意識が盛り込まれることになる。

2000年11月23日

ワークショップ2日目。1日目翌日の雨で石畳のパルプが湿り気を帯びている。早朝よりガスバーナーでパルプを乾かし、午前中に石畳のパルプを美術館に運ぶ。美術館では展示のための木枠を製作するとともに、参加者によるパルプの鋳型を作り、錫の鋳造に取りかかる。パルプの表面に山門の風化した木目の写りが思いのほかとても良く、錫の美しい光沢ともあいまって参加者には大変好評を得た。ただ、パルプが乾燥することによりやや反りが生じていたのが作業を困難にした面もあったが、小さな釘を打つことで解消した。この拐による鋳造は私が好んで最近頻繁に使用しているもので、溶解温度が比較的低く、かつ湯主売れも良いので、こういたワークショップには最適の方法だと思える。工夫次第ではより多くの可能性を秘めていると思われた。ただ専門性が高いので一般に普及するにはやや無理な点もあるが、オリジナルに富んだ企画にはうってつけである。
私の制作表現手段は普段から鋳造というプロセスを介しており、今回のワークショップにも私の特徴を取り入れた。この鋳造というプロセスは、最初に対象となる物体(形)があり、それを元にして異なるほかの材料で雌型を起こし、最後にさらにまつたく異なった物体を流すことによって成り立っている。その間3回材質が変化してゆく。このことが単に形を作ってゆくといった作業行為を超越して、超現実的なプロセスと受け取られ、古代より精神的な背景を含ませながら語られることになるのだが、この点は他の機会に述べることとする。
何やかやで大まかな作業が落ち着いた矧こは、もうすっかり夕闇が迫っていた。展示のほうは、美術館のスタッフの協力で作られた蟇股の雌型が予想以上に面白く、柱の型を展開した形も周囲の空間を引き締めるのに十分であった。今回のワークショップを通して感じたものは、多くの人々の参加によって作業が進む中、パフォーマンスが当初の青写真にはない意外な展開に発展してゆくということだ。また、それであるからこそ、たとえささやかな時間帯ではあるにしろ、歴史を共有していった体験をリアルに感じ取ることができ、参加者一人一人が持っている胸の鋳型の奥深く、さわやかな記憶として流れ込み、永遠にパックされてゆくのだと思えた。

2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum2000 Tatsuno Museum




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