2006年6月アーカイブ

2006年6月17日

ジョンソンアトリエのこと

ジョンソンアトリエとは民間の彫刻スタジオです。いや、でした。というべきか。数年前に閉鎖して今は無い。

私は学生時代鋳金という技法を学んだ。従って表現手段として主に鋳金を用いている。ところがこの鋳金という技法はかなり複雑で習得にはかなりの時間が必要である。長い経験が必要なのだ。そのことが原因かどうか分からないが、鋳金を表現手段とする作家は少ない。人体彫刻などでブロンズにする作家はいるがその多くは専門の業者にお任せして作家自らが鋳造工程を行うことは少ない。外国作家でも少数であったようで、人体彫刻で自分で鋳造していたのはマンズーくらいだろうか。
また、鋳造工場はおおむね閉鎖的でその技法を外部に公開することは極めてまれだ。自分の技術を盗まれたくないという職人の狭い技量が邪魔をしている。そんな中、このジョンソンアトリエは学校形式を取り、技法を外に向かって開放している唯一の機関であった。たまたまアメリカに行ったおり見つけてきたものだ。私は小躍りした。今までの日本の技法だけでなく世界の技法が学べるし、そのことが表現にも影響してくることを期待したからだ。
ところがしばらくたってそのジョンソンアトリエの正体が分かってきた。

ジョンソンの名前の由来は、バンドエイドなどを作っているジョンソン・ジョンソンカンパニーから来ている。
しかし衛生製品を作る会社がなぜ鋳造にかかわりを持ったのか。
それはジョンソンの会社の御曹司が人体彫刻を作っている作家であったのが起因している。つまり彫刻家である息子の作品を鋳造するに当たり、ついでに学校を作ってしまったというわけ。アメリカの財閥のスケールの大きさが分かるというものだ。
しかし話はそれだけで終わらない。学校という形式を取ることによってかなりの節税を行っているということだ。さらに学校という名のもと、生徒という名ばかりの工員に鋳造作業を行わせており、生徒には奨学金という名目で入学金は取らず、その代わり、その労働賃金は当時の最低賃金を下回る微々たるものであった。何と頭の良いことか。

また話は続くのだ。
息子の彫刻家が鋳造した作品を取引先の関係者に売りつけているということであった。
息子ジョンソンの作品は極めてリアルな人体彫刻で、身につけている衣装の素材は本物から取っている。こんな細かな技法を駆使出来るのも、自ら鋳造作業に関わることが出来るからだ。もっとも息子作家自身は小さなマケットを作るだけでそれを元に大きくして鋳造して行くのはアトリエに通って勉強(?)しつつ働いている生徒が行うのだ。

しかし対局的に見返すと、鋳造業界が極めて閉鎖的な世界であることを考慮に入れれば、まがりなりにも技法を開放し、広めていることには間違いなく、その点だけは認めて行くべきであろう。

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